* another sky *

私、良い上司に恵まれたんだな。

教育係だった桜木さんを通じて、諏訪さんと話すようになって。

関西人のベタなノリが、だんだんツボに入ってきて…。

それから……。

会社でも少しずつ笑えるようになってきた…と思う。


「諏訪君、上手く飼いならした感じ。」


「せやろ?

俺と吉野のコンビ、ちょっといい感じやろ?」


「おやじギャグには疲れますけどねっ。」


わざと憎まれ口を叩くと、チッと舌打ちをされた。


「お前、上原翼といえば人気高いぞ。」


反撃するように諏訪さんは言う。


「…そうなんですか?」


「あほか。女子のファンしかおらんやろ。」


「女子、って…。」


あ、でも、翼も言ってたっけ。


「そういえば、――――。

前に翼が、女の子に不自由したことないって言ってた。」


いつも周りに女の子がいたし。

俺、王子様系だし。

別れてもすぐに出来るし。


なんて、嫌味な台詞をあっけらかんと話していたっけ。


「最悪な男やな。」


俺なんて…、と拗ねる諏訪さんに、

「いーの、いーの。諏訪君には私だけで。」

と、桜木さんは頭を撫でた。


この二人、本当に微笑ましい。


「ま、でも、何やかんやゆうて、俺のおかげやな。

ちょ、はよ呼べって。」


「レッスン中は電話に出れないですって。」


「なんや、一緒に飲みたかったなぁ。」


残念そうにビールを飲み干す諏訪さんに、私は冷たいビールを継ぎ足した。
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