* another sky *


―――――。


俺の、意見を押し付け過ぎたのかもしれない。

そんなことはわかっているけれど、帰ることはないよな。

何であそこまで、頑なに嫌がるんだろう?

一度くらい、着てみたらいいのに。


「それ飲んだら帰るで。

俺も新婚さんやから、奥さんが待ってるし。」


「俺も諏訪さん家に帰りたい。」


「王子、…。

そんな拗ねんと、早う、家に帰り。」


ふてくされた俺の背中をバシバシ叩き、諏訪さんは声を上げて笑った。


ったく、――――。


笑いごとじゃ、ないですって。


ま、じ、で、―――。




「…おかえり。」


家に帰ると玲は、予想に反して、リビングで俺の帰りを待っていた。


「起きてたんだ…。」


「…うん。」


俺は冷蔵庫から冷たいお茶を取り出し、コップに注いでリビングへ戻る。


「遅かったね…。」


「え? ああ…。」


「お酒、飲んでたの?」


玲の、もの言いたげな視線が突き刺さる。


はいはい、飲んでましたよ?

デートの途中に帰られるなんて、やってらんないっしょ。


「だったら、何?」


アルコールのせいもあって、突っかかった言葉にイライラが表れてしまう。


「…今日は先に帰ってごめんね。」


玲は俯いたまま、小さな声で謝った。


「……っ。」
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