Enchante ~あなたに逢えてよかった~
不本意ではあれど、ここまで来てこのまま引き返すのは
確かに大人げない。
先方は先方で来客の為の支度を整えて待っているのだろうし
仲立ちをした大和の立場を思えば尚更だ。
今日のところは当たり障り無くやりすごして
後から大和を通じて断ればいい。
そう考えた澤田は、それでも渋々といった顔で承知した。
「わかりました」
「よかった~!あ、期待してていいですよ」
「何をです?」
「絢子さんですよv彼女、いーオンナなんですよねえ」
大和の声のトーンが一段と柔らかくなった。
濃いガラスの眼鏡に阻まれて表情は伺えないが
おそらく目尻が下がっているはずだ。
「はぁあ?」
「サバサバっとしてるのに色気があるというか・・・
それを押し隠しているけど隠しきれないフェロモンが
隙間からうっすら滲み出ていて、何ともこう、ソソられるんですよ。
思わず振るいつきたくなるような」
「先輩・・・」
「君も絶対そう思いますって!」
いや、そんな事は絶対思わない。一緒にしないでくれ、と
内心で思いながら、まるで中年のオヤジのような大和の発言に
呆れた澤田は、やれやれと深いため息を落とした。
今後、彼への先輩としての尊厳をどう保ったものかと
頭を抱えたくなった。