Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「おーい、澤田くーん!」
「・・・はい?」
「ボクのことは眼中にないみたいですね?」
そんなことはありません、と少し焦った風の澤田の肩を
大和は軽くたたいて「いいです いいです」と頬を弛ませた。
「糸居くんが車のことで話があるから降りて来てもらいたいそうです」
「わかりました。すぐ行きます」
荷物を載せて糸居が運転してきた四駆車を
ここにいる間、澤田が借りることになっているのだった。
糸居は薬品メーカーの研究員として働いている。
研究所に長期間 篭ることも少なくない彼の生活では
せっかく車を所持していても乗る機会は少なく
ガレージの肥やしになるばかりだった。
車は走らせてナンボのもの。メンテナンスも兼ねて
澤田に貸し出すことを申し出たのだった。
大和について部屋を出た澤田を見送った後で
開け放ってあった窓を閉めた絢子が
「私達も行きましょうか」と三木を促し階下へ向かおうと
踵を返したときだった。
「絢子さん」
「はい?」
三木に呼ばれて、絢子は立ち止まって振り返った。