89×127

バッと顔を上げると、顔の横、思ったより近くに中川くんの顔があった。



急に顔をあげたからか、その顔は少し驚いた表情だ。

でも、それもすぐに心配そうな表情に変わる。



「先輩、顔すごく赤いですよ?熱があるんじゃないですか?」



背中をさすってくれているのとは反対の手がおでこに伸びてくる。


それを無言でガードし、勢いよく立ちあがったあたし。




「大丈夫である。気になさるな。」





妙に落ち着いた声でそれだけ言って走り出す。

ちなみに顔を上げたところからここまで、体が無意識に動いた結果であり、あたしの意思は皆無だ。




―――

「おかえりーどこ行って、きた、の?あれ?」

「なーぎーさー……」


そして教室の渚のもとへたどり着いた今、絶賛悶え中である。

何にって、ここまでの自分の行動に対する羞恥にだ。




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