ハルク

雪ハ解ケル2



はるくとは意外にもすんなり会えた。

スリッパから靴に履き替えて昇降口から出ると正面には校門がある。

校門に向かって歩いていると、門を出て少し離れたところに、立っているはるくを見つけた。

私と目が合うと、にこにこ顔で手を振る。

心のどこかであのメールは夢だったんじゃないか?私は騙されてるんじゃないか?という疑心暗鬼が拭えなかった私は、こんなにすぐはるくと再会できたことに戸惑った。
でも、嬉しさには勝てなくて顔は笑顔に足は自然と早足になる。

私が校門を潜ると、笑顔ではるくが駆けよって来た。あの笑顔で私を見る。

同じ学校の生徒が私とはるくを好奇心の目で見比べていたけど気にならなかった。

「先生に睨まれちゃったよ」はるくはそう言って笑いかけてきた。

「誰に睨まれるの?」

後ろを振り返ると校門の前でじっと私とはるくを見ている。校門の前に立っているのは英語の山崎だった。
「あそこに立ってる男の先生」

はるくが笑顔で先生に手を振る。

いつの間にか仲良く?なってる。

すると、山崎がこっちに向かって歩いて来た。
山崎と目が合って私はどきりっ、鼓動が速くなる。
『昨日、起きたこと』をふいに思い出す。

山崎は私を見てから、はるくに目線を移し話し始めた。

「待ち合わせするのはいいがこれからは事前に約束して、学校の前で待ち合わすのは止めなさい」と教師らしいことを言った。

「そうします」

笑顔ではるくは答えると山崎は私に視線を戻した。

「沢もだぞ」

小さく「はい」と頷くと、山崎は渋い顔で、でも怒っているわけでもなく「気を付けて帰れよ」と私たちに言って校門の前に戻っていった。

ただの英語教師だと思っていたのに案外、頼りになるいい教師なのかもしれない。と、私の中で山崎の評価が少し変わった。
けれど、山崎が去るまで私は背中に汗をかいて一言も言葉を発することが出来なかった。動悸が激しくなって苦しい。声が出ない。

私が無言だったことに気付いてはるくが声を掛けてくれた。

「あの先生の授業受けてるんだって?」

私はあわてて顔を上げて笑顔を作った。

「うん…そうなんだ」

はるくを心配させないためにそうしなきゃならなかった。

上手い笑顔が作れたかはわからない。けど今は、私の心の中をはるくには察してほしくない。

「どした?元気ない」

はるくの笑顔が曇る。

私の笑顔ちゃんと出来てなかったのかな。不安になる。もしかして私の気持ちが読まれたのかと心配になった。

「そんなことないよ」

『そんなことない…』

心の中で今自分が口にした言葉を繰り返した。

『そんなことない…そんなことない…』

自分に言い聞かせる呪文みたいに私はその言葉を何度も唱えた。
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