杞憂きゆう〜ムダなことなどひとつもないね〜短編集

「 ねぇ、
はじめて人から
好きだ!と言われて
それだけなのに…
それだけのことなのに
体が熱くあってね
空も飛べるかもってくらい軽くなったんだよ!
あの日は…
って、聞いてるの? 」



私のソファになっちゃうのかなってくらいに
私にピッタリくっついていて
私を自分の膝に乗せている…

そう、
この人が私に好きだ!と
言ってくれた彼です。

駈道くんなんです。



1日1日が
私にとって初めての連続で

1日1日が
私を駈道くんの彼女だという不安に包まれていく。



好きだ!
言ってくれた
次の日には
手を繋いで歩いてくれたね。

その一週間後
おでこに
おやすみのキス

駈道くんに会うたびに
私の初めてが増えていった。



デートの待ち合わせ
あまりにも早く来てしまった私

イヤホンで音楽聴いていたら


「 どんな音楽が好きなの? 」



って
一つのイヤホン片方ずつで…
音楽よりも
駈道くんの近さに
自分のドキドキがうるさくって
同じモノを楽しめなかったんだよね。



駈道くん
私は
そんな小さな幸せを
一つ一つ積み重ねて
恋をしている!
ってことが
少しずつ知っていったんだよ。


はじめてだから…

ぶきようだから…

駈道くんのペースが…



わからなかったの。





「 ごめん。 」



始まりも
終わりも
駈道くんの一言で決定なの?


そこに私の気持ちを入れてはいけないの?



1日1日
好きになっていった一年間を

1日1日
忘れていくことができるのかな?




やっと
駈道くんに似た声に
振り向かなくなった頃に


駈道くんが
私の知っている女の子と
腕を組んで歩いていた。



ふわりちゃん…
最近めちゃくちゃ可愛くなったねって
バイトの先輩が言ってた

こういう理由があったんだね。


ふわりちゃんを
何年も前から知っていたのに

今みた横顔は
はじめて見た
女の子の顔だった…



そっかぁ
駈道くんにとって
私はもう
過去になっていたんだね。


よりによって今日なんて
告白してくれた記念日だったのに…

私の誕生日だったのに…

なんで今日見せてくれたの?


駈道くん

最高なプレゼントだね。





end


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