True my self -本当の自分-
「あ、そうなんですか。じゃあ、見とれてました」
私は『見とれてました』の部分をわざと棒読みに言い放った。
「…面白くねぇ…」
そう、福栄が呟いていたのを、私は無視して歩き出した。
―――スタッスタッ…。
福栄がヘラヘラしながら走ってくるのを確認して、少し歩くスピードを上げてみた。
「ケチ~~~!!」
そう叫びながら走ってくる福栄に、「これ以上早く歩いたら更に煩くなる」と悟り、元のスピードに戻してやった。
すると福栄は、私の横に付き、急に周りの時間が止まってしまったように真剣な顔で立ち尽くしていた。
「―――あのさ、」
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