キスから魔法がとけるまで


明日どーせ暇なんでしょ?と、梨花に強引に約束を交わされた。

目的は勿論、言うまでもなく私の改革。


重い足取りで自宅に帰ると、リビングから私を呼ぶ聞き慣れた声がして、思わずうなだれた。


バレたくなかったのに、さすが刑事だ。

部屋に直行する手段を断たれた私は、のっそりとリビングのドアを開け、両親と談笑中の声の主に頭を下げた。

「どうも……」

「こんな時間までご苦労様」

彼は父の部下の原田悠生(ハラダユウキ)。27歳。温厚で世話焼きの性格が滲み出てるような人だ。
時折見せる甘いマスクで、婦警官が群がる様子が鮮明に見える。

この人程、道を間違えてると思う人物はいないだろう。

人柄からの人気と仕事ぶりが評価され、交番勤務を経て父の刑事科に配属されたらしいが。
父はえらく彼を気に入ったようで、頻繁に我が家に連れ込んでは夜食を供にしている。

原田さんも断ればいいものを、嫌な顔を一つせず父に連れられてやって来る。
ああ、こんな強面上司には逆らえないのか。



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