INそしてOUT
「はい」
小さく返事をして
僕はやっと真正面からふたりを見つめる。

口元を引きつらせ
憔悴しきった男の隣りには姉が座っている。

小柄で細身の姉は、ベージュのコートを着ていた。

いつもと少し違うのは

頭と胸元からダラダラと血を流し、身体が半透明になっていて

一昨日
本人の葬儀が終わっていた
それだけの事で
あとは何も変わらない。

微笑みはいつもの優しいまま、切ないぐらい変わっていない。

じっと見ていると涙が出そうな気がして、猫舌のくせに運ばれてきたコーヒーを一気に喉に流していた。
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