竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

そして先週のこと。婦人服フロアを優雅に歩く『スーツの男』を発見した、従業員の一人が声を掛けたという。



「何かお探しでございますか?」

「――」



声を掛けられた彼は硬質な眼差しでフロアを見回した後、

「ここにはないようだ」

と、一言だけ行って、立ち去った……。






「そしてまた一週間後の今日、その噂のイケメンが食品フロアに来たってわけよ!」

「で、今度こそ何か買ったの?」

「ううん。やっぱりぐるっとフロアを周っただけ。噂通りすっごくかっこよかったから、すぐにわかったよ。だけどおはぎ一個くらい買って行ってくれてもいいのにねえ……」



直子はふうっとため息をついて、メニューを開いた。



確かに謎だ。

目当てのものはなかったはずなのに、スーツのイケメンは一週間に一度やってきて、店内を1フロアずつ見て回ることを止めない。

いったい何をしに来てるんだろう?




――――……



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