竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

驚いたけれど、エリだっていつまでも喧嘩しているのは精神衛生上よくないとわかっているので身をゆだねてしまった。


久しぶりに肌を重ねてみれば、ほんの少しだけ興奮したけれど、終わってしまえばあっさりだ。

即座に母との約束を思い出し、帰りたくなってしまったのだから……。



「じゃあ、また来週」



着替え終わったエリは、ベッドに横になったままのマー君を見下ろす。



「おう、来週~」



スマホをいじりながらひらひらと手を振るマー君。


こっち見ろよ、馬鹿。

と、自分のことを棚に上げて口には出せなかった。


せっかく仲直りしたんだし……。余計なもめごとは御免だ。


日々是平穏也。


おまじないのように心の中でつぶやき、靴を履く。


そして足早にアパートの部屋を出て100メートルほど歩いたところで、ふと、腕時計をしていないことに気付いた。

職場にもつけて行っている、オメガの時計だ。




< 21 / 120 >

この作品をシェア

pagetop