竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
が、もしかしたら食後にコーヒーでも飲みながらかもしれない。
そんなことを考えた一瞬――
「あのね、エリ」
桜子が突然、口火を切った。
「お父さんに、会いたい?」
「ッ……」
母親から投げつけられた爆弾に、エリは硬直した。
箸を持った手が細かく震える。
「もし……もしもなんだけど、エリがお父さんに――」
「会いたくないっ!」
自分でも驚くほどの金切声が出た。
「な、なんなのよ、急に! 私にお父さんなんかいないでしょ! やめてよ、そういうこと言うの!」
「エリ……」
エリの豹変ぶりを想像していたのか、いなかったのか、桜子は持っていた箸を箸置きに休ませ、両手を膝の上に置いて背筋を伸ばす。
「突然じゃないの。ずっと、話さなきゃって思ってたの。話さないわけにはいかないってわかっていたんだけど、言い辛くて――」