竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

自立だなんて、正直まったく考えていなかったエリだ。

貯金だってあるようなないような、そんな程度だし、そもそもエリのアルバイトは生活費ではなくお小遣い稼ぎだった。

自分の面倒など見られるはずがない。


いっそ、マー君に頼んで少しの間置いてもらおうか……なんて考えもしたが、エリの女としてのプライドがそれをやめさせた。


あの男に頼るくらいなら、ネットカフェで暮らしたほうがマシだ。



そして一方、本当にネットカフェ暮らししかないかもしれないと、悩んで知恵熱が出そうになったころ、コンタクトを取ってきたのが雪光だった。

と言っても、相変わらず連絡先は知らないので、さざれ百貨店の仕事帰りに待ち伏せ&捕獲されただけだったのだが。



「とりあえず家に来ればいい」



彼はエリが行くところがないことなど、承知のようだった。

もしかしたら桜子と連絡をとっているのかもしれない。



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