SHIMAUMA
第1章

第1章。

待ち合わせ時間は午後8時半、

場所は波川のバス停。

そこで取引先に書類を渡して

今日の仕事はおしまい。


現在時刻は午後8時17分、

波川のバス停までは10分ってとこかな?

早歩きでギリギリ間に合うと思う。


取引先の名前は忘れた。

上司には

「これを渡すだけでいいから、」

って言われて、詳しいことは教えてくれなかった。


持たされたのは

A4サイズの茶色い封筒。

中身のことなんて知るわけもなく、

両腕に抱えてバス停を目指す。


昨日降った雪が固まって、

地面は滑りやすくなっている。

一歩一歩、力を込めて歩く。

あたりはすっかり暗い。


上司には、

書類を渡した後はそのまま帰ってもいい

って言われてる。

本当は100円ショップで手芸用の布を買いたかったけど、

疲れたから波川のバス停からバスに乗ってそのまま帰ることにしよう。


時刻は午後8時22分、

そこの角を右に曲がって真っ直ぐ行くと

波川のバス停がある。


私はマフラーで口元を覆い、

歩き続けた。
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