ラララ吉祥寺

「そ、そうなんですか……」

思いがけない木島さんの告白に、わたしは自分の事情も吹っ飛んでしまう。

わたしの独白をはぐらかされた気がした。

「だから、僕の芽衣さんに対する気持ちは後ろめたさ、かな。

身ごもる女性に世話を焼くのは、自分に対する自己満足かもしれません」

所謂偽善です、でもね……、と木島さんは続けた。

「離婚を経験してわかったことがひとつあるんです」

「ひとつ?」

「そう、ひとつだけ。

それはね、100%は駄目なんだってことです」

「全力投球は駄目、ってことですか?」

「僕はね、どちらかというと体育会系で、頑張って結果を出して、評価されるって世界が当たり前だと思ってた。

会社に入って、結婚して、妻を養うために全力投球で仕事をして。

それなりに妻のことも大事にしていたつもりだったし。

100%、自分は限界ギリギリまで最善を尽くしていた、と思ってた。

だから、妻が精神の安定を崩して離婚したいと言った時、何で?って先ず思ってしまったんです。

自分はこんなに頑張ってるのに、何でそれを妻がわかってくれないのか、ってそればっかりで。

彼女の気持ちを思う余裕なんてなかった」
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