ラララ吉祥寺
「僕達の両親が事故で死んだ時、僕は二十歳で芽衣は十五でした。
僕らの両親は子連れの再婚だったので、僕達二人に血の繋がりはありません。
父は、芽衣の実の父親がまだ生きていることを気遣って彼女を養女にすることを留保していたので、二人が同時に死んだことで、芽衣は事実上孤児になってしまったんです。
そして、父の死後、両親の遺産は子である僕が全て引き継ぐ形になりました。
葬儀の席で親戚達は、こぞって芽衣を施設に入れることを勧めました。
血の繫がりの無い男女が二人だけで暮らすことに、大人は不快な想像しかしなかったんです。
両親が結婚して五年、家族四人、僕達は本当に幸せに暮らしていたんです。
芽衣と僕は気持ちの上では本当の兄妹だった。
二人が居なくなったからって、血の繫がりが無いってだけで、なんで芽衣と別れて暮らさなきゃならないんだ、って。
僕にとっても芽衣は唯一残された家族で。
彼女まで居なくなったら、僕はきっと生きる気力を無くしていたでしょうね。
親戚に対する意地もあって、芽衣を家に留めて置くために、僕は芽衣の良い兄を演じることに必死になりました。
それは芽衣が成長した今も、僕の心の大きな枷になっていて。
芽衣は守るべき家族であり、妹であり、彼女の幸せを願うのが僕の責任であると。
だから……、彼女に触れるつもりはなかった……。
触れてはいけなかったんだ……」
そう独白する花岡さんの顔は苦悩で歪んでいた。