ラララ吉祥寺

彼は冷めたコーヒーを一口、口に含むと無理矢理飲み込んだ。

わたしはその様子を胸が詰まる思いで見つめていた。

それでも彼は話を止めなかった。

まだ大切な何かを話あぐねているような、切羽詰まった様子があった。

「二日酔いで気分が悪かったというのもあるのですが、しばらく放心してしまって。

気がついたら、芽衣の姿は何処にもありませんでした」

予め荷物を纏めていたようなんです、と花岡さんは呟いた。

「芽衣の会社に問い合わせても、僕らは戸籍上は家族ではないので、個人情報は教えられないとはねつけられて。

だから自分で探すしかなかった。

芽衣は僕に探して欲しくはなかったのかもしれないけれど、探さずにはいられなかった。

居なくなってやっとわかったんです。

芽衣は僕の全てだったって」

文子さんはどう思われますか、と花岡さんが聞いてきた。

「芽衣は僕に幻滅したんじゃないでしょうか?

酔った勢いで妹を抱くような男です。

逃げられて当然なのかもしれません」
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