ラララ吉祥寺

みんなが帰ったキッチンで。

カチャカチャ、カチャカチャ、わたしは食器を洗う。

大皿が殆どだったので、そんなに量は無いのだけれど。

その横で、布巾を片手に木島さんが皿を拭く。

「手伝って貰っちゃって、すいません」

とわたしが言うと。

「文子さんは古いなぁ~

今時、家事協同は普通でしょ」

なんて木島さん。

「だいたい、文子さんに主婦は似合いませんよ」

「えっ?」

「僕は、文子さんにはもっと羽ばたいて貰いたいんですよ。

貴方には、まだ気付かない才能がいっぱいある。

僕は親馬鹿ならぬ、彼氏馬鹿ですからね」

それ何ですか? と笑ってしまった。

「それに……

そろそろ、貴方はここを飛び立つ時期ですよ。

確かにこの街は居心地が良い。

でも、場所に囚われちゃ駄目だ。

世界は広いんです、羽ばたかないと」

文子さん、この街を出たこと無いんでしょ、と木島さんが笑って言った。
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