ラララ吉祥寺
夢うつつ

「うわぁ~ん、文子さぁ~ん」

「芽衣さん、そんなに泣かなくても……」

「だって……、寂しいです」

俊一くんの退院を明日に控え、今日は花岡さんが休みをとって、朝から芽衣さんの荷物を引き取りに来ていた。

木島さんが組み立てたベビーベットも解体され、軽トラに積み込まれた。

木島さんとわたしが用意した、出産祝いのバギーも一緒に。

「いつでも遊びに来れば良いじゃないですか。基本、わたしは家にいるんだし。

手伝えることがあったら何でも言ってください。保育園の送り迎えも遠慮なく声かけてくださいね」

わたしに抱きついて離れない芽衣さんの背中をポンポンと優しく叩いた。

「文子さぁ~ん」

「なんだか、芽衣を連れてく僕が悪者みたいですね」

それでも泣き止まない芽衣さんを見て、花岡さんが少し困ったように呟いた。

「まぁ、仕方ないね。

何しろ僕達はここ半年、そりぁ楽しく暮らしていたんだからさ」

「それ以上に芽衣を幸せにできるよう、頑張ります!」

「ハハハ……、その意気だ」

明日は俊一と一緒にご挨拶に伺います、と丁寧に頭を下げて花岡夫妻はマンションへと帰っていった。
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