ラララ吉祥寺

「文子さんの無防備さは今に始まったことじゃありませんが、一応僕も立ち合わせて貰います。今回はね」

木島さんは帰るなり、自分の荷物を芽衣さんがいた真中の部屋に移し出したのだ。

「もし、見学者が男性だったら困るでしょ。

だから僕がこちらに移ります。

その方が何かと都合も良いし」

夜這いもかけ易いですしね、とさらりと言われて顔が熱くなった。

確かに、見学者が男性だった場合、わたしはこの家で赤一点となる。

女性限定にするべきだったか……、と今更ながら思ったが、原点に立ち戻り首を横に振った。

最低必要限度の条件に男女の別は無い。

人物本位、それに尽きるのだ。

「まぁ、文子さんの運に任せるしかないでしょ」

なにせ貴方は、現在運気上昇中ですからね、と木島さんは最後の荷物を部屋に押し込み、わたしの頭を優しくポンポンと叩いて言った。

「さてと、夕飯はどうしましょうか?

七時まで間が無いから、軽くお茶漬けでも食べときますか?

終わったらお好み焼きでも焼きましょう」

確かキャベツの古漬けがあった筈です……、と木島さんが糠床を探り出す。

わたしはドンブリに冷ご飯をよそい、急須にお茶を入れた。
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