鬼姫の願い





とある夜の杉目城の一室。

そこに三つの人影があった。


人払いされた静かなその部屋で一つの影が他の二つに深く頭を下げているのを小さな灯りが照らし出している。


誰にも知られぬよう配慮されたその場所で語られるのは、決して知られてはならぬ秘密の話。




「…本当に、それで良いのですか?」


「無理をする必要はないのだぞ」




どこか戸惑ったように言葉を発するのは既に隠居した身である伊達晴宗と、その正室である杉目御前こと久保姫だ。


そしてその前で深々と頭を下げるのは彼らの次男であり、現伊達家当主である輝宗(テルムネ)の正室・義姫(ヨシヒメ)である。




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