鬼姫の願い
決して崩れぬその姿に晴宗と久保姫は戸惑いを隠せない。
そんな二人を前にして、義姫は深く息を吸い込むとゆっくりと口を開いた。
「…私は、嫌われ恨まれても構いませぬ。ですから…ですからどうかあの子を、よろしくお願い致します」
悲痛な叫びにも聞こえたその声。
全てを賭けるようなその声に、晴宗たちは"わかった"と首を縦に振ることしか出来なかった。
義姫が部屋を去った後。
二人は彼女が出ていった先をただ見つめる。
「本当に…不器用な子だ」
「えぇ…輝宗は気付いてあげられるでしょうか…」
どうか彼女の想いが無駄にならぬようにと願いながら。