魅惑ボイス−それを罪と呼ぶのなら−




「―――凛!」





突然名前を呼ばれて凛は振り返る。そこには肩で息をする村上先生が居た。


英語の教師なのにいつもジャージの先生は優しく、時には厳しく生徒に接し、信望が厚い。彼は凛が一年生の頃からの担任である。





「悪い悪い!今日は助かった!」

「いえ。お役に立てて光栄です。」




そう言って微笑む凛は何処からどう見ても模範生。その優しさに甘えた村上先生は凛に資料整理の手伝いをして貰った。





「手際が良くて助かった。」

「先生は大雑把なんですね。」

「はは、」





苦笑いで頭を掻く。どうもこう言う作業は苦手だ、と呟く先生が可愛く見えた。26歳と若い村上先生は凛から見れば、まるでお兄さんのようだった。
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