雨が降る日は誰か死ぬ
工事が完了したのは、それから二週間後のことである。


当初は、通常水門を解放して水の無い状態にしておき、

雨が降ったときに水門を閉じて、上流の水を下流に流さないという目的で作られたダム湖なのだが、

第一堰堤だけは常時閉じられて、水が一杯に溜められた。


理由はもちろん、あの祭壇を水中に沈めて、人目に晒さないためである。


最もトヨを生贄に捧げて以来、川が氾濫するほどの豪雨が降ることがなくなってしまったので、ダム湖自体が必要なくなってしまったのだが……。


その後健作は、工事が終わって誰も訪れなくなっても、毎月1日には花を供えるために、第一堰堤を訪れ続けたのである。


そしてそれは健作の没後、その娘の華へと受け継がれたのだった。

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