それでも、愛していいですか。

公園を出ると、孝太郎は自転車を押しながら車道側を歩いた。

「孝太郎はどこに行ってたの?」

「ああ、連れの家。餃子作りすぎたから食いに来いって言われてさ。初めて作ったわりにはなかなかうまかったよ。同世代の男の手料理なんて初めて食った」

そう言うと、孝太郎はいつもの明るい笑顔を見せた。

「よかったね」

「うん。俺も今度作ってみようかな」

「作ったら、食べさせてよ」

何気なくそう言うと、孝太郎は少し黙ってから。

「食べてくれるの?」

孝太郎の声の調子が変わったのがわかって、軽はずみなことを言ってしまったことに気づいた。

「じゃ、頑張っちゃおうかな」

そう言って孝太郎は、にんまり笑った。

そして、会話は途切れた。

車輪の転がる音だけが、夜道に響く。

不自然な沈黙。

孝太郎はしっかり前を見て歩いている。

その横顔を奈緒はちらりと見上げた。

シャープな顎のライン。

きゅっと結んだ唇。

格好いい。

凛としている。

奈緒は視線を落とした。

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