それでも、愛していいですか。
奈緒は、ひょいっとブランコから立ち上がった。
その時、公園の前を通りかかった自転車がブレーキをかけて止まったので、とっさにそちらを見やった。
「奈緒!」
その声に心臓が跳ねた。
孝太郎だった。
阿久津のことばかり考えていたので、不意打ちに遭ったような気持ちになった。
孝太郎は自転車を押しながら、公園の中に入ってくる。
「孝太郎」
「こんな時間に一人でなにやってんだよ。襲われるぞ」
孝太郎は少し険しい顔をして奈緒をじっと見つめた。
「ごめんなさい……」
奈緒がしょんぼりとしていると、孝太郎はフッと鼻で笑い。
「ったく、しょうがねぇな。ほんとお前は」
「ごめんなさい……」
叱られた子供のように、奈緒の声はどんどん小さくなっていく。
「一緒に帰ろう」
「うん」