それでも、愛していいですか。
「こんなに好きなのにぃ」
奈緒はカウンターに突っ伏したまま、本能のままに口走っている。
「だ、そうですよ。阿久津先生」
君島は阿久津をまっすぐ見つめた。
阿久津は目をそらし、奈緒を見下ろした。
「僕が言うことではないですけど、彼女のこと、女として興味がないのなら、さっさと振ってあげてくださいね」
「なんですか、それは」
阿久津は怪訝な顔をして君島に視線を戻した。
「奈緒ちゃんは僕のかわいい友達ですから。彼女が苦しんでいるのは見ていたくないだけです」
「苦しんでる?」
「そうです。奈緒ちゃんは先生のこと、本気ですよ」
君島の鋭い視線を阿久津は受け止めることができなかった。
しばらく沈黙が流れると、君島はいつもの軽い口調で、
「そんなわけで、頼みますよ、阿久津先生。僕じゃ手に負えないんで」
と言ってにんまり笑った。