それでも、愛していいですか。
「奈緒ちゃん、阿久津先生来てくれたよ」
君島は奈緒をカウンターから引きはがした。
奈緒は「うんうん、あのね、加菜はね……」と脈絡のないことを呟いている。
椅子から立ち上がらせたものの、よろけてしまい、君島と阿久津は同時に奈緒の身体を支えた。
「じゃ、よろしくお願いします」
君島が手を離すと、奈緒の全体重が阿久津の腕にのしかかった。
「相沢さん。しっかりしてください」
そう言いながら彼女の態勢を直そうとした時。
「あくつせんせぇ!」
目の前に阿久津がいることに気がついた奈緒は、阿久津から離れようと慌てたせいでよろけていまい、背中から倒れそうになった。
それをかばおうと、阿久津は必死で彼女の頭に手を回したが、バランスを崩してしまい、奈緒に覆い被さったまま倒れ込んでしまった。
奈緒の頭をかばった右手がじんじんと痛む。
「大丈夫ですか?」
目の前にある阿久津の顔に驚いた奈緒が、とっさに起き上がろうとした瞬間。