それでも、愛していいですか。


阿久津は奈緒をおぶったまま店を出て、車を止めた駐車場まで歩いた。

「大丈夫ですか」

「だいじょうぶじゃないよぉ。だって、落ちちゃったもん」

阿久津の肩にしがみつきながら、うわ言のように言う。

「試験ですか?」

「先生のことねぇ、だいすきなの。ないしょだからね」

「支離滅裂だな」

少しずつずり落ちてしまう奈緒をおぶり直しながら、「どれだけ飲ませたんだ、あの男は」と呟いた。

ただ、黙々と歩いた。

酔っ払っているとはいえ、いや、酔っ払っているからこそ、奈緒の告白に動揺した。

そして、久しぶりに感じた女性の唇のやわらかさがまだ唇に残っていて、胸がざわついていた。

駐車場に着くと、阿久津は奈緒を助手席に乗せた。

運転席に乗り込み「シートベルトしてください」と声をかけたが、奈緒は半分寝ていて反応がない。

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