それでも、愛していいですか。
「ずびばぜん……」
ひとしきり泣いた後、ハンカチで涙や鼻水をぬぐいながら君島に頭を下げた。
ほんの少しだけ、すっきりしたような気がする。
問題はなにも解決していないけど、感情を発散できてよかった。
それにしても。
君島先生の包容力。
改めて、大人だと思う。
「なにがあった?ん?」
穏やかに語りかける君島の声が体にしみる。
奈緒は静かに目を閉じ、深呼吸をしてから、ゆっくりと話し始めた。
マスターに「阿久津くんを救えるのは、やっぱり愛だと思うんです」と言われたこと。
「阿久津くんを許してあげてくれませんか」と言われたこと。
そして、合コンに行った帰りに、雅哉にキスをされ、それを阿久津准教授に目撃されたこと。
ぽつりぽつりと話す奈緒の話に、君島とシュンは根気よく耳を傾けていた。