それでも、愛していいですか。

「だから、私にはもう、阿久津先生のことを許すとか、もう、そんな資格はないんです……」

「う~ん……」

君島とシュンが同時に腕を組んで、唸った。

二人とも、同じことを考えていたようで。

「愛、かあ……」

シュンが呟き。

「許す、かぁ……」

君島も呟いた。

そして、二人は声をそろえ、

「慈悲深いねぇ……」

としみじみ言った。

「いいかい?奈緒ちゃん。マスターがどこまでわかったうえで奈緒ちゃんにそんなことを言ったかはわからないけどさ。あの口の堅いマスターがそこまで言うんだよ?その意味、わからない?」

……そりゃあ、まったくわからないわけではない。

なにかあるだろうことは、漠然とだがわかる。

わかるけど……。

「阿久津先生には愛が必要ってわざわざ奈緒ちゃんに言ってるんだよ?つまり、阿久津先生には奈緒ちゃんが必要、ってことだよ?」

「でも……キスしたところ、見られたんだよ?私にはそんな資格ないよ……」

「それを決めるのは、奈緒ちゃんじゃなくて、あの先生なんじゃないかな」

シュンは諭すように語りかける。

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