それでも、愛していいですか。
「はい、今行きます」
インターホン越しに阿久津の声がした。
緊張で目が泳いでしまう。
唇を噛みしめたまま、うつむいた。
その時。
ガチャ――。
ゆっくりと玄関の戸が開いた。
奈緒の心臓が飛び跳ねた。
はっと目を開くと、目の前には、玄関の取っ手を握ったまま立っている阿久津がいた。
お風呂がりなのか、洗いざらしの髪が妙に色っぽい。
二人の視線が絡み合う。
先生……。
阿久津の顔を見たとたん、頭の中であれこれと考えていたことは全部真っ白になった。
やっぱり、好き。
どうしても、好き。
押さえ込んでいた思いが一気に溢れ出し、目がしらが熱くなる。
無言のままただただ見つめあう。
見つめあえば見つめあうほど、今までの出来事が走馬灯のように駆け巡り、求めずにはいられなかった。