それでも、愛していいですか。
「え、えっと……うん。気にはなっているけど……でも、ほら、なんていうの。憧れっていうかさ……」
おろおろしながら答えると、加菜は、
「奈緒の王子様だもんねぇ」
と言って、にやにやしながら奈緒の脇腹を肘でつついた。
「王子様って。……でもね、私、見ちゃったんだぁ」
「なにを?」
奈緒は、カフェで阿久津とばったり会ったことを話した。
そこに一緒にいた、黒い髪のきれいな女性のことも。
「だから、先生とどうこうなろうとか、そんなふうには考えられないよ」
思わずため息が漏れた。
「だけどさぁ。仮にそれが奥さんだったらさ、どうしてあんなにクール、っていうかコールドなんだろうね。関係が冷えてるとか?でもそれだけで、学校でもあんなに冷たい必要ないよね……。あ~聞いとけばよかったねぇ。先生が独身かどうか。……って、あ、でも、聞けるような雰囲気じゃなかったしなぁ」
「聞けるような雰囲気じゃなかったの?」