それでも、愛していいですか。

「奈緒ちゃん、いい人いないかなぁ」

なんて軽口を聞くと、元気が出る。

「先生格好いいんだから、モテるでしょ?」

「モテるけど、モテたい人にはモテないのだよ」

と、他の男性が聞いたら少しイラっとするような台詞をさらりと言った。

「奈緒ちゃんはどうなのよ?」

「え?私?」

「そう、私。ああ、そうそう。阿久津先生、どうだった?なかなかのイケメンだったでしょ?」

「あ、え、あ、はい」

突然、阿久津という名前が出てきておろおろしてしまった。

それを見逃さなかった君島は、

「ん?奈緒ちゃん、なに、その反応」

と鋭く突っ込んでくる。

「ひょっとして?」

君島は身を乗り出す。

「や、ちょっと、なんですか」

さらにうろたえる。

「もう、わかりやすいなぁ、奈緒ちゃんは。そういうとこ、かわいいよね」

「からかわないでください」

君島はレンガ調の壁にもたれながら笑っているかと思えば、突然奈緒の腕をつかみ、鼻先が当たるのではないかと思うくらい顔を近づけてきた。

さすがに奈緒も、それにはドキッとしてしまったが。

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