それでも、愛していいですか。

気がつくと、またため息が漏れていた。

窒息してしまわないように、体が無意識に酸素を取り込もうとしているようだ。

今日は学校、サボろう。

加菜に合わせる顔がない。

加菜のことを考えると、孝太郎と同じこのアパートに今いることも、息苦しく感じた。

この部屋から出なければ、誰にも顔を合わせないで済むが、阿久津の件といい、孝太郎と加菜の件といい、閉じこもって考えているとどうにかなってしまいそうだったので、気を紛らせるために出かけることにした。

玄関の戸を開ける。

普通なら、この時間、孝太郎は大学へ行っているはずだから会うはずはないのに、それでもなにかの拍子で顔を合わすのではないか、とびくびくした。

今度、孝太郎と会う時、どんな顔をして会えばいいのだろう。

奈緒は、一人電車に乗った。

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