それでも、愛していいですか。
デパートが立ち並ぶ中心街へ出ると、奈緒は目的もなくぶらぶらと歩き始めた。
店のショーウインドウは、夏の装い。
華やかでまぶしくて、まるで今の自分とは真逆だった。
しばらく歩くと、落ちついた雰囲気の店があった。
ディスプレイしてある男性と女性と子供の3体のマネキンは、派手でなく、でも決して地味でもなく、ナチュラルで優しい雰囲気の服を着ている。
なんとなく惹かれて、その店の中に入ると、まるで条件反射のように「いらっしゃいませ」と店員に声をかけられた。
特になにも目的のない奈緒は、ぶらぶらと店の中を歩いていた。
すると、店員が近寄ってきて、「手に取って見てみてくださいね」と声をかけてきた。
「はい……」
と一応返事だけして、店員の方をちらりと見たとたん、一端落とした視線をもう一度店員に戻してしまった。