それでも、愛していいですか。

「そう」

美咲は安堵の声を漏らすと、背もたれに体を預け。

「涼介さんが他所(よそ)の人に自分のプライベートなことを語るなんてめずらしいから。変な心配しちゃった」

美咲の笑顔に、胸が痛んだ。

同時に、他所の人、という言葉に険を感じた。

この人は、阿久津先生の秘密を知っている。

この人は、きっと、阿久津先生のことを思っている。

美咲が自分をけん制しているのがありありとわかった。

『これ以上、仲良くならないでね』

そう言われている気がした。





< 77 / 303 >

この作品をシェア

pagetop