それでも、愛していいですか。
他愛もないことをぽつりぽつり話しながらパスタを食べ終えると。
「奈緒ちゃん」
美咲がおもむろに口を開いた。
「はい」
「涼介さん、奈緒ちゃんには言ったんだね。自分のプライベートなこと」
「え?」
「私が義理の妹だって」
「あ、はい……でも、まぁ、わたしが尋ねたから教えてくれたんですけど……」
美咲の視線から逃れるように、小さく答えた。
「他になにか、言ってた?」
その台詞に、背筋がぞくりとした。
「え……」
『私は、妻を殺したのだよ』
あの時の冷ややか阿久津の顔と声が蘇る。
言えない。
そんなこと、絶対言えない。
ちらりと美咲の顔をのぞき見ると、自分をまっすぐ見つめていて、少し怖かった。
「……特に、なにも」
視線を合わせないまま呟くと、美咲が小さく息を吐いたのがわかった。