それでも、愛していいですか。
「あ、見て見て」
加菜が指差す方を見ると、浴衣姿の女子二人組が君島たちに声をかけていた。
「先生、逆ナンされてる!」
加菜は興奮して、奈緒の袂(たもと)をぐいぐい引っ張る。
行末が気になってその様子を凝視していると、君島は申し訳なさそうに顏の前で両手を合わせていた。
「あー!先生、振っちゃったぁ。けっこう美人そうな人たちだったのに。なにがダメだったんだろう。やっぱり先生には彼女がいるってことかぁ。格好いいから当然か」
逆ナンの結末に、加菜は一人うなずいている。
……そういえば。
春ごろ、二股をかけられていたと随分憤慨していたが。
あれから新しい彼女ができたのだろうか。
すると、奈緒たちの視線を感じたのか、君島はこちらに気がついて、ひらひらと手を振った。
手を振りながら隣りの彫の深い男性になにかを話している。
おそらく「彼女たちは自分の学校の学生だ」とでも言ったのか、その男性は軽く頭を下げた。
奈緒と加菜もつられて軽く頭を下げる。
「なんか先生楽しそうだねぇ」
「ねぇ」
二人は去って行った君島の背中を見つめた。