それでも、愛していいですか。
「はぁ……」
奈緒はため息をつきながら君島にカフェオレを差し出した。
喫茶店でのアルバイトが、いい気分転換になっていた。
温かい明かりとマスターの穏やかな空気が心を和ませてくれる。
「どうしたの?そんな大きいため息ついて」
君島が優しく尋ねる。
「なんか、難しいですね」
奈緒がそう言うと、君島は鼻で笑って「難しいんだ」と呟いた。
「なにがおかしいんですか?」
奈緒が少し不愉快な表情を浮かべたので、君島は、
「ごめんごめん。いや、だって、前に『物事を複雑にしてるのは自分自身なんだよ』って話をしたばかりなのに、またそうやって言うから……」
と、奈緒をなだめる。
「奈緒ちゃんは、いろいろ考えちゃう性分なんだよね」
そう言って、にっこり笑った。