それでも、愛していいですか。
「それに、鈍感だしね」
奈緒が自虐的にそう付け加えると。
「だけど、自分のことを鈍感だって気づいてるってことは、本物の鈍感じゃないんだよ。本当に鈍感な奴からは、そんな台詞出ないから」
君島は優しく諭す。
「そうなのかな……」
「そうだよ。僕は奈緒ちゃんのこと、けっこう買ってるんだけどな」
そう言って浮かべた君島の微笑みに、一瞬きゅんとしてしまった。
「あ、ありがとうございます」
照れくさくてまともに君島を見られない。
「先生は、どうなんですか。最近」
「最近?相変わらず論文書いたりしてるけど」
「そうじゃなくて。プライベートのこと。恋愛のこと。もう、わかってるくせに」
「僕は相変わらずモテてるよ」
その言葉に思わずため息が漏れた。
「そうですね。この前の花火大会でも逆ナンされてましたもんね」
「あ。あれ、見られてた?」
「ばっちり」
君島は苦笑しながら、人差し指でこめかみを掻いた。