気まぐれ作品置き場



あいつの最後の言葉は、やっぱりあの大きな手の温もりより温かかった。



『蜘蛛(くも)、お前にゃ仲間がおんねやから、もうお行き。一人やないで』



そう言って乗せられた右手は、払おうにも払えなかった。

温かすぎて、泣きそうになって。


あいつはいつも、優しい言葉を吐くときだけは変な口調になる。

一度そう言った時もあるけれど。



『うん? “こっち” の方がええねやろ?ちゅうか、もともと関西寄りやったしなあ。僕ん住むとこは』



なにが “いい” のかサッパリだったけど、最後になってやっと分かった気がする。

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