蒼宮の都
「美味しいっ」

「気ニ入ッテ貰エテヨカッタワ」

もりもり食べるラサを嬉しそうに見つめながら、黎明は二本の棒で器用に食事を口に運ぶ。
昨夜からちゃんとした食事をしていない二人は凄く空腹だった。

黎明が暮らす離宮のダイニングは、恐ろしく豪華だった。
大理石の床に高い天井、大理石製の一枚板のダイニングテーブルは、20人が一度に座れる広さがある。
扉の彫刻も、壁になされた装飾も、それひとつで庶民ならば半年は働かなくても暮らしてゆける。

「華の料理は美味しいわね、見た目も華やかで凄く綺麗」

「ファティマノ料理モ美味シイワ、香辛料ノ使イ方ガ上手ナノネ」

テーブルには華とファティマの料理がずらりと並んでいる。

「この料理は誰が?」

「ファティマ王宮ノ料理人達ヨ。華ノ料理ハ藍深ガ作ルワ」

「彼は料理人なの?」

「イイエ、私付キノ護衛ヨ。ダケド、料理モ上手ナノ」

ラサは自分に向けられた藍深の目を思い出す。
柔らかな笑みの下にある感情が、決して好意的なものでないことにラサは気づいている。

(そりゃそうか……)

大事な姫君がどこの馬の骨か分からない人間をスラムから連れて来れば、いい顔をしないのは当然だ。
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