涙のあとの笑顔
「フローラの食べ方が小動物みたいで可愛い」
「そうね。人の食べ方を見て可愛いと思ったのはこの子が初めてよ」
「あれ?スピードアップしていない?」

 ニヤニヤと笑っているケヴィンを視界の端で見た。
 私は照れ隠しのようにひたすら食べていた。
 料理を食べ終えて、水を飲んで喉を潤していると、ステラがやってきた。

「あの、これはサービスです」

 置かれたものは小さなパフェが置かれた。

「いいの?」
「もちろんです。気にせずどうぞ」

 食べようとしないので、ステラは不安げな顔になった。

「ひょっとして苦手ですか?」
 
 もちろんそんなことない。食べる回数がとても少なかったから見た瞬間、こうして食べることができることに嬉しさと戸惑いが入り混じっていただけ。

「ううん、パフェって、あまり食べたことがなかったの」
「そうですか。では、失礼致します」

 ステラはくるりと踵を返して行った。

「まさかサービスをしてくれるとは思わなかったね」
「イーディ、落ち着いて」

 イーディは今にも跳びつきそうになっている。

「甘そう」

 思わぬデザートがやってきたんで、驚きより喜びが大きかった。
 パフェを食べ終える頃には満腹になった。

「もう食べられない」
「もし余裕があったとしても、駄目だよ」
「そろそろ行こうか?」
「そうね」

 立ち上がると、ケヴィンが金を払うために先に歩いた。
 テーブルを拭いているステラに声をかけた。

「パフェをありがとう。また機会があれば来るね」
「はい!是非!」

 外に出たときには二人が待っていた。

「ケヴィン、ご馳走様」
「フローラ、俺よりあとに来るなんて、もしかして出口がわからなかった?」
「わかっていた!ただ、ステラにきちんと礼を言っていたの」
「そういうことにしておくね」

 いや、だからそうなの!何で信じてくれないのかな?

「別の店を見に行く?」
「あちこち行って、本のことを忘れさせようとしていないよね?」
「魔法具を見たいから、あっちに行こうか、フローラ」
「私を無視しないで」

 ここからすぐ近くに魔法具店はあった。
 中には一定の期間だけ空を飛ぶことができる草や透明になれる飴、魔力を高める草、攻撃用の魔法を防ぐことができるブレスレット、見せたいものを見せることができるアロマキャンドルなどが売られていた。商品はたくさんあった。
 だけど目当てのものがなかったので、私とイーディは何も買わなかった。買ったのはケヴィンだけ。

「何を買ったの?」

 ケヴィンは人差し指を自分の唇に当てて、秘密のポーズをとった。

「怪しいものを買ったの?」

 イーディは怪訝そうな表情をして、私をケヴィンから遠ざけた。

「嫌だな、そんなことないよ」
「内緒にされると疑いたくなるわ」
「いずれ教えてあげようかな」

 本当に教えてくれるのかな。彼は気まぐれなところがあるから期待しないでおこう。

「それじゃあ、書店に戻りましょう」
「ちゃんと忘れないでいたのね」
「当然でしょ?」
「仕方ないな」

 イーディは欲しがっていた本をケヴィンに買ってもらい、笑顔が溢れていた。
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