涙のあとの笑顔
「そんなに強く否定しなくてもいいじゃない」

 だって、本当のことだから。

「私は楽しかったから」
「俺はそんな話を聞いても楽しくないな」
「ちょっとケヴィン」
「イーディ、邪魔をしないで」

 ケヴィンはピシャリと言い放った。すっかり怒りモードにしてしまった。
 どうしよう、どうすればいいの?

「機嫌を直して、ケヴィン・・・・・・」

 いつもなら抱きしめたりするのに、今日はそれがない。
 ケヴィンはそっぽを向いたままでこっちを見ようとしない。
 何考えているのよ、それって、そうしてくれることを願っているみたいじゃない!
 もう一度呼びかけてみたが、やはり返事はない。

「ケヴィン、いい大人がみっともないわよ。フローラを困らせないで・・・・・・」
「フローラ」

 いつもと違う声のように感じた。

「何?」
「俺のことが好き?」
「うん、好きだよ。ケヴィンは私のことを嫌いになった?」
「いや・・・・・・」

 軽く首を横に振って、否定をした。

「・・・・・・私、どうすればいい?」
「俺が言うことをちゃんとしてくれるならいいよ」

 言うこと?何を言い出すつもりなんだろう?
 イーディを見てみると、少し険しい顔に変化している。

「わかった、言う通りにする。それで何?」
「俺と一緒にいる時間を増やして」

 フローラはそれを聞いて、首を傾げる。

「増やしてって、どういうこと?睡眠時間を少し削ってほしいの?」
「そういうことじゃない。俺が一緒にいる間は俺のことを考えていて」
「独占欲がこんなに強いとは思わなかったわ」
「イーディは口を挟まないで」
「もっと俺と一緒にいて、約束だよ」
「うん、約束する」

 約束を交わしてから、イーディが口を開く。

「フローラ、意味をわかっている?この会話、まるで恋人同士がするようなものよ?」
「そうなの!?えっと、あの・・・・・・」
「イーディの言葉に惑わされないで、ね?」

 いや、そんなことを言われても、混乱するばかりだよ。

「本当はいつも二人きりでいたいのに、どこかの誰かさんが邪魔をするから」
「それ、私のことを言っているの?」
「さあね」
「本当に腹立たしいわね」
「イーディが怖い、フローラ、助けて」

 怖がるふりをして抱きついてきている。
 本気で怖がっていないのに、私はよしよしと頭を撫でてしまう。
 これ、癖になってきていないかな。

「私もフローラと二人で出かけるから」

 その前に二人とも、早く仲直りをしようよ。
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