涙のあとの笑顔
 やっぱり一人よりこうして複数で食べると明るくなる。

「後で抱きしめていい?」

 ケヴィンにはいつも抱きつかれる。猫がじゃれるような感じで。

「どうして?」
「そうしたいと思ったから」
「またこの男はこんなことを言う。フローラ、だめよ。簡単に許すものではないから」
「朝食を運んでくれてありがとう、イーディ。仕事に戻っていいよ」
「これも仕事よ!」

 喧嘩になりそうだったので、ジュースを一気飲みして、イーディにコップを差し出した。

「イーディ、ジュースのおかわりをもらっていい?」
「えぇ、すぐに」

 朝食後、ケヴィンを見送ってから私は手紙を買いに出かけた。イーディもついていこうとしたが、仕事の手伝いを頼まれてそちらに行った。
 もう少しで街に入ることができたのに、複数の令嬢達に道を塞がれてしまった。

「間違いない?」
「うん、この子よ」

 どの令嬢を見ても、好意で見られていない、悪意で満ちている。関わると厄介になるのは見えているが、通れない以上は声をかけて道を譲ってもらうしかない。

「通してもらえますか?」
「あなた何様!?」

 いや、そこを通してほしいだけ。もう、こんなところで時間を無駄にしたくない!

「ケヴィン様に近づいて何をするつもり?」
「汚らわしい。ただの一般人じゃない」
「さっさと家へ帰りなさいよ」

 家。私の家はもうない。帰るとしたら、ケヴィンのところ。ん?ケヴィン?何でケヴィンのところって思ったのかな。一緒にいる時間が多いけど、それはイーディだってそう。
 考え込んでいると、一人の令嬢に強く肩を掴まれた。

「黙っていないでなんか言いなさいよ!」
「やめなさい!」

 遠くから女の子の声がした。誰だろう?

「女の子をいじめるなんて恥を知ったらどうなの!」
「カレン様!?」
「どうしてここに・・・・・・」

 どこかで聞いたことがある名前。

「今すぐこの場から立ち去りなさい!」

 令嬢達はさっきと態度を変えて、すぐに逃げ出して行った。

「大丈夫?」
「はい、あの、ありがとうございました。カレン・・・・・・様?」
「私はカレン・カーティス。カレンと呼んで?あなたはフローラね?」
「は、はい。そうです!私のことを知っているのですか?」
「城であなたの話題をよく聞くから」

 にっこりと微笑みながら教えてくれた。今まで城で綺麗な人達をたくさん見てきたが、彼女はさらに綺麗な人だ。

「急ぎの用事だったの?」
「いえ、買い物に行こうと思っていたのです」
「あら、そうだったの」
「はい」
「またお会いしましょう。次からは敬語は駄目よ?」
「はい、いつかまた」
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