涙のあとの笑顔
「だったらどうして!」

 すぐにそれを渡してあげないの?

「何を企んでいるの?」

 にたりと不気味な笑みを浮かべた。ぶるりと寒気が走った。

「フローラ、勝負をしよう」
「勝負?」
「一週間後に俺からこれを奪って。もし奪えなかったら・・・・・・」
「何をするの?」
「これを利用する」

 利用するって、それについて何を知っているの?

「それは・・・・・・」
「まだ言っていなかったね。これには強い魔力が秘められているんだよ。とても強い魔力をね」
「何のためにこんなことを?」
「俺はずっと前から求めていたものがある。あの子、ステラはそれを手に入れるために利用したんだよ」
「な!?」

 強い衝撃を受けて、立っていることが辛くなった。
 
「ステラには魔法具でこれとそっくりのものを渡している。それも八日目になれば消える。それだけじゃない」
「まだ何かしているの?」
「ステラは眠るよ」
「眠る?」
「もちろんどんなに呼びかけても起きることはない。そうなるようにしておいたから」
「あの子を騙したの?」
「うん、簡単に騙されてくれて助かった」

 全身の血が逆流するのではないかと思った。
 信じられなかった。信じたくなんかなかった。

「どうする?勝負をしてくれる?それともこのことをステラに言う?」

 言えるわけない、そんなことをしたらステラが傷つくことは目に見えている。それをわかっていてこんな質問をするなんて!
 冷たい笑みのまま、私を見下ろすケヴィンを睨みつけた。

「勝負、受ける。これ以上あの子を傷つけたくない」
「そう言ってくれると思っていたよ。フローラがどうやってこれを奪い返すのかな。じゃあ、おやすみ」

 パタンとドアを閉めた瞬間、その場に座り込んだ。
 何が起こったのかさっぱりわからなかった。ケヴィンの考えていることが掴めない。
 理解に苦しむ一方で決して楽になんてならなかった。
 一週間後にどうなるのか、これっぽっちも想像がつかなかった。
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