涙のあとの笑顔
 さっきのことが気になっていたので、アンディさんにぶつけた。

「私達、昔、どこかでお会いしました?」

 アンディさんは驚いて、私を凝視した。何か言うのをじっと待っていると、口を開いた。

「会っていない」
「でも」
「さっきのはここに来てもうだいぶ経つだろう?そのときを思い出していただけだ」
「私はときどきアンディさんを見ていると、誰かに似ている感じがして。でも、思い出せなくて・・・・・・」
「誰かと重ね合わせているんだな。だが、俺は俺だ」
「そうですよね。すいません、突然変なことを言って・・・・・・」

 困った、会話が続かなくなっちゃった。

「そろそろ戻りましょうか、あっ!」

 小さな子ども達が走ってきたので、そのまま後ろに倒れそうになったが、アンディさんの腕が私を支えてくれた。礼を言おうとしたら、手で口を覆われた。

「まだいいだろう?もう少し」

 何がもう少しですか?いつまでくっついているんですか!?

「うろついてもいいだろう?俺がいるから」

 そりゃあ、いいですよ?断る理由なんてありません。

「もう少し抱きしめて欲しかったか?」

 断る理由がほんの数秒でできました。

「な!一人で自由に動き回ってください!私は帰ります!」
「俺だって冗談くらい言う。そう怒るな」
「誰のせいですか?」
「俺だってことにしておいてやる」
「やるって・・・・・・」

 やるも何もそれが正しいのですよ?そう言っても、きちんと聞いてくれないよね、きっと。
 それから夕方まであちこちと振り回される羽目になって、へとへとになった。そんな私を楽しそうに目を細めて眺めていた。

「今日はいろいろと刺激的だったな。悪くない」
「まさかここまで疲れるとは思いませんでした」

 話と全然違う!彼と会う度に話をしたり、どこかへ連れて行かれている!ひょっとして私だけ?
 他の人達と行動している姿は見たことがない。

「あの、ときどきこうして外へ連れ出してくれるのって、私だけですか?」
「あぁ、他の奴じゃつまらないからな」
「つまらない?」
「お前は他の奴とは違う。そういうことだ」
「アンディ、何しているの?」

 現れたのは仕事帰りのケヴィンだった。いつもより黒いオーラが漂っていて怖い。

「時間があったからフローラと外に出ていた」
「俺の女を勝手に連れ出さないでくれる?」
「ケヴィンの恋人か?」
「いいえ」

 私が否定したからケヴィンの顔はますます険しくなった。

「何で否定をするの?」
「本当のことだから」
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