涙のあとの笑顔
 聞いている途中で少しずつ血の気が引いた。
 村の人達は何もしなかったってこと?されて当然と思ったから?
 誰も最初から止めようとしなかったの?犯人の好きなようにさせたってことだよね?ひどい、こんなこと、あまりにもひどすぎる!
 嗚咽を漏らしながら、ポロポロと涙を流した。

「フローラ」

 レナードは下から私の顔を見て、そっと涙を拭った。
 
「誰からの情報?」
「俺が育った市の奴が言っていた」

 ちなみに私の家があったクロスビー村から三キロ離れたところに市はある。
 どうしてその人が知っているのかと疑問をぶつけた。

「そいつが村で食事をしていたときに店で他の客人が話していたことを耳にしたらしい。フローラの名前を知っていたから俺に伝えた。家を燃やされたことはここへ来てすぐに知った。客人について教えられたのは最近だ」
「それじゃあ、村の人達も罪じゃない!?」

 真実を少しも知ろうとせず、誤情報を信じて私を好きなように傷つけたことも重罪だ。

「何とかしたいのに・・・・・・」
「聞いたという証拠がないからどうすることもできない」

 これじゃあ、あのときと変わりがないよ!私は泣くことしかできないの!?

「今、村の人達は?」

 のうのうと暮らしているの?何事もなかったかのように。

「一部の村人達はどこかへ逃げた。お嬢ちゃんの力の大きさを誰かに聞いたのだろうな」
「力の大きさ?」
「あちこちで魔獣を倒しているのだろう?中にはなかなか倒せないようなものも。だから怖がって逃げた」

 もっと怖いことを嘲笑いながらしていたくせに!

「他の人達は?」
「今も暮らしているな。あんた、まさか戻るつもりか?」
「いや・・・・・・」

 否定をしたが、心は揺れ動いたまま。

「やっぱりここで楽しく生活をしていても、怒りが静まらないか」

 レナードは私の嘘をきっちりと見破っていた。いつも嘘だとばれている。
 それは彼にかなわないことの一つで腹立たしく思う。
 
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